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人材要件とは? 作り方や定義と目的、採用ペルソナとの違い、フレームなどを解説

人材要件とは

企業活動にとって人材採用は欠かせません。しかし、どのような人材が自社で活躍できるのかを採用時点で明確に判断するのは難しく、採用担当者間での採用基準を統一することも簡単ではありません。そこで、関係者間で共有する人材要件の定義が必要となります。

この記事では、人材要件の概要や人材要件が必要となる理由、人材要件を作る際のアプローチや人材要件を作る際のポイント。また、人材要件を作る際のフレームワークなどについても紹介します。

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人材要件とは?

人材要件とは、「自社が採用したい人材像を具体的に定義したもの」のことです。企業では、人材要件のことを「求める人材」として表現することも多いでしょう。

また、採用活動においては「採用要件」と表現されることもあり、自社に必要な人材に必要なスキルや経験、これまでの実績を言語化することで、自社が採用したい人材の大まかな人物像を表現します。

人材要件で定義する項目の例

人材要件で定義すべき代表的な項目としては、以下のようなものがあります。

  • 職務経験
  • スキル
  • 性格
  • 仕事に対する考え方
  • 自社で期待する役割
  • 労働条件

他にも、自社の従業員として共通して必要な要素を自社独自の項目として選定することで、自社で活躍できる人材の採用に繋がるでしょう。

人材要件と採用ペルソナとの違い

人材要件以外に、採用したい人材の特徴を表現する用語として「採用ペルソナ」という用語が使われます。採用ペルソナは、人材要件をもとに自社で採用したい人材の人物像をより具体化したもので、ペルソナを設定することでリアリティを高められます。

例えば、採用ペルソナでは、従業員の家族構成や出身大学、所属部活やその中での役割、趣味嗜好、週末の過ごし方など架空の情報を詳しく設定します。

人材要件が必要とされる理由

人材要件は、以下の理由から必要とされます。

経営戦略と一致した採用戦略の実現

企業の経営戦略において、「ヒト」は重要な経営資源の一つであり、他の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)に影響を与えられる唯一の要素です。経営戦略を着実に進めていくためには、経営戦略に必要な人材を必要なタイミングで採用する必要があります。

企業が必要とする人材を適切なタイミングで採用できれば、企業の経営戦略やビジョン、方針の実現、競合他社との差別化につながります。しかし、事前に十分な準備をせず採用活動に取り組んでも、自社が必要とする人材の採用は簡単にはできません。

そこで、自社が必要とする人材の特徴を人材要件として明確にし、タイミングに応じて人材要件を調整することで経営戦略と一致した採用戦略の実現が可能となります。

関連記事:人的資源とは? 意味と特徴、人的資本との違いを解説

採用のミスマッチ・早期離職防止

採用にコストをかけて能力の高い人材を採用できたとしてもその人材が自社の方針や雰囲気と合わずに能力を活かせない場合、活躍する前に短期間で退職してしまう場合があります。

せっかく採用した人材が活躍できずに早期退職をしてしまうと、その人材の採用にかかったコストは無駄になります。採用のミスマッチや早期退職防止を実現するためには、自社が求める人材を人材要件として明確にし、基本的な能力の高さよりも人材要件に合った人材の採用を優先することが大切と言えます。

採用基準の統一

企業における人材採用のプロセスでは、さまざまな職位・職種の従業員が関わります。企業ごとの考え方、採用プロセスにもよりますが、企業の規模が大きくなればなるほど関わる人材が増えていくことが一般的です。

自社でどのような人材を採用したいのかを関係者全員に共有できていないと、採用活動における求職者に対する評価基準にばらつきが生じ、誰が面接をするかで評価・採用結果が変わってしまいます。

人材要件を定義し採用関係者にもれなく共有することで、採用基準を統一させ、評価者の違いによってばらつかない採用を実現できます。

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人材要件を作る際のアプローチ

人材要件を作る際には、主に演繹的なアプローチと帰納的アプローチがあります。

演繹的アプローチ

演繹的アプローチでは、経営方針や事業内容を分析し、その結果に基づいて人材要件を定義します。具体的には、以下のような流れで進めるといいでしょう。

STEP1:経営方針・事業内容の明確化

自社の経営方針に合った人材要件を構築するために、まずは自社の経営方針や事業内容を明確にします。また、どのような活躍を期待して採用を行うのかも整理しましょう。

STEP2:関係者へのヒアリング

配属予定部署が求める要件を人材要件に織り込むために、関係者へのヒアリングを行います。スキルや能力、思考などを明らかにすることで、採用後のミスマッチによる早期離職などを起こしにくくできます。

STEP3:必要な要件の整理

STEP1,2で集約した情報を元に、必要な要件を具体的に列挙します。具体的な配属先が想定されている場合には、そこで必要とされる要件も明確にしておくといいでしょう。

STEP4:要件の優先順位の調整

抽出した要件に優先順位をつけ、採用に関わる関係者に共有します。認識の不一致があると狙い通りの採用ができないため、注意が必要です。

帰納的アプローチ

帰納的アプローチでは、自社のハイパフォーマー従業員を分析し、その結果から必要な能力や特性を抽出。抽出したものを人材要件として定義します。具体的には、以下のような流れで進めるといいでしょう。

STEP1:優秀な人材の選定

はじめに、自社の従業員の中で優秀とされる人材を選定します。特定の業務に偏らないように、幅広い業務・年代から選定することが重要です。

STEP2:対象者へのヒアリング

選定した人材に対して、人材要件に反映させるための情報をヒアリングします。ヒアリングでは、仕事に対する考え方や取り組み方など、外部からは分からない項目の確認を優先するといいでしょう。

STEP3:要素の抽出

ヒアリング結果から、具体的な要素を抽出します。特定の個人のみが持つ要素なのか、複数の従業員が持つ要素なのかは、分かるようにしておく必要があります。

STEP4:人材要件への反映

抽出した要素を、人材要件に対して反映させます。調査結果は、現在活躍している人材なので、将来的にどうなるかということも踏まえて反映することが重要です。

人材要件を作る際に役立つフレームワーク

自社の状況に合わせた人材要件を作成する際には、以下のようなフレームワークを参考にするといいでしょう。

MUST・WANT・BETTER・NEGATIVE

事前に、自社の従業員に必要なさまざまな要素を網羅的に集めた上で、集めた要素をMUST・WANT・BETTER・NEGATIVEの4つに分類し、採用判断をする際の優先順位を明確にするフレームワークです。

人材要件を厳しくしすぎると、条件に合致する人材が少なくなってしまいます。一方で、人材要件が緩すぎると対象者が多くなり、誰を採用すべきかの判断が難しくなります。本フレームワークの活用で人材要件の各要素に優先順位をつけておくことで、判断基準が明確になり、効率的な採用活動を実現可能です。

必要な要素の抽出には、自社の経営方針や具体的な業務内容、また自社で働く従業員へのヒアリング結果など複数の観点から抽出を行います。複数の観点で抽出することで、網羅的な抽出が可能です。

GRPIモデル

GRPIモデルは、人材要件の作成だけでなく組織開発にも使われることが多いフレームワークで、Goal(目標)、Role(役割)、Process(手順)、Interaction(関係性)の4つの要素で構成されます。

人材要件に対してGRPIモデルを活用する場合には、各要素を以下のように考え、当てはまる要素を抽出していくといいでしょう。

  • Goal:企業、組織としての目標は何か
  • Role:Goalを実現するために、どのような役割を担う人材が必要か
  • Process:役割を実現するためには、どのようなプロセスを構築する必要があるか。また、それにはどのようなスキルが必要か
  • Interaction:自社の従業員といい関係性を構築できるか。そのマインドを持っているか

コンピテンシーモデル

コンピテンシーモデルは、自社に所属する従業員の中で高いパフォーマンスを発揮する従業員に着目し、ロールモデルとなる人物像を確立させる考え方です。

確立した人物像を元に人材要件を定義することで、自社で活躍できるポテンシャルの高い人材の採用が期待できます。一方で、ロールモデルを確立するためには、自社で活躍する複数の従業員をさまざまな観点で分析し、共通項を抽出する時間が必要となります。

一方で、分析対象とする人材の選定次第では、偏った人材要件が作成され偏った人材採用につながる恐れもあります。自社に必要であり、かつ、多様性が確保できる人材選定・人材要件になっているかは常に確認を継続する必要があります。

氷山モデル

氷山は、海上に出ている部分は氷山全体のほんの一部であり、その大部分は海中にあり、目には見えないことでよく知られています。氷山モデルとは、外側から見えている部分だけでなく、目には見えていない部分にも着目するという考え方です。

人材を評価する際に外側から見えている要素の代表的なものに「行動」が挙げられます。一方、外側からだけではわからない要素として「スキル」や「マインド」が挙げられます。

人材要件を定義する際にも、外側から見える「行動」だけでなく、その行動に至った「スキル」や「マインド」がどのようなものであるかにも着目するとよいでしょう。

人材要件を作成する際のポイント

人材要件を作成する際には、以下のポイントを押さえておくことが望ましいでしょう。

譲れない要素の明確化

人材要件を策定する際には、譲れない要素(MUST要素)をあらかじめ明確にしておくことが重要です。もし譲れない要素を明確にしていなければ、複数の採用候補がいた場合に、本来であれば優先的に採用すべき人材の優先順位を下げてしまうリスクが生じます。

しかし、譲れない条件が多すぎると、対象となる人材を見つけるのが難しくなってしまうため、要素を限定することが大切です。一方で、譲れない要素を減らし過ぎると対象者が多くなりすぎてしまうため、バランスをどのように取るかは試行錯誤が必要です。

人材要件のPDCAを回す

人材要件は、一度作成したらそのまま使い続ければいいわけではなく、PDCAを回してブラッシュアップすることが望ましいと言えます。例えば、以下のシーンでPDCAを見直すといいでしょう。

  • 人材要件に基づいて採用した人材が自社で十分に活躍できない
  • 採用関係者にうまく共有できる人材要件になっていない
  • 内外の環境変化により、企業の経営方針に変化が想定される、もしくは変化した

これらのシーンで人材要件の更新ができるようにPDCAを回すことで、採用した人材が期待通りに活躍してくれる確率も高まるでしょう。

育成可能な要件は含めない

人材要件にはさまざまな要素を網羅的に織り込む必要がありますが、採用後に育成可能な要件はMUST条件に含めないように注意しましょう。

採用後の育成を前提とした新卒採用と、即戦力を採用する中途採用では必要な要素は異なります。自社の業務で経験を積むことで得られる要件よりも、入社してからは身に着けることが難しいが必要となる要件を重視するようにしましょう。

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人材要件を作成する際の注意点

人材要件を作成する際には、以下の点に注意しておく必要があります。

人材要件のバランスを考慮する

人材要件を定義しそれに沿って採用を進める場合には、採用する人材が特定の要件のみに偏ってしまわないように、バランスを考慮する必要があります。もし、全体のバランスを考慮せずに採用を続けると、特定の要件を持った人材のみが多く採用されてしまい、企業から多様性が失われてしまうリスクが生じます。

多様性が失われてしまうと、さまざまな状況変化に対応しにくくなりアイディアも出にくくなるでしょう。企業の多様性を保つために、採用を進める際には特定の要件を持った人材に偏ることなく、幅広い要件を満たすような人材を採用することが大切です。

客観的な情報で判断する

人材要件に合致しているかどうかを判断する際には、可能な限り客観的な情報に基づいて行うことが望ましいと言えます。主観的な情報だけでは評価基準にばらつきが生じやすく、統一された採用活動を行うことはできません。

本記事でも紹介したコンピテンシーモデルなどを用いれば一部の行動特性を数値化できますが、人材要件のすべてを数値化することは困難です。数値化が難しい要件については、複数の目で判断する体制の構築なども考慮する必要があります。

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